2011.11.18
稽古中に指導者の発する言葉に対して、そのつど「押忍!」と答えるのは当然であると先に書いたが、不思議なもので、この時の声の大きさが技術の上達と関係している。
絶対というわけではないが、これまで数多く指導してきた経験から、ほぼ間違いなく声の大きさと上達の速さは比例するといっていいだろう。返事や気合の声が大きな道場生ほど確実に強くなっていく。また、入門したての弟子が唯一先輩に負けない、それどころか勝つことができるのが、返事や気合の大きさなのだ。変に照れたりして声を出せない者は、なかなか上達するのは難しい。
最近、よく目にするのが、上司や先輩などに叱られている者が、叱られるととっさに照れ笑いのような笑いを出す光景である。何に対してのプライドなのかわからないが、笑うことによって現実と真摯に向き合うことを拒絶しているようにも見える。自分の間違いやミスをきちんと受け入れられない者は、もう前に進むことはできない。その時点で成長が止まってしまうのである。
道場で大きな声を出せない者を見ていると、それと同じような匂いが感じられるのだが、あながち的外れな思いではないだろう。
まあ、それでも結局は自分自身の問題だから、最後は自分で責任を取らなければいけないだけなのだが、これが道場だとまた違った問題が出てくる。
道場で古株にあたる先輩によって道場全体のレベルが変わってくるのだ。私の弟子に小さな声で返事をする者はいないが、それでも、より大きな声で返事をする先輩が多い道場のほうが、道場生全体の技術の上達が早い。
たかが声の大きさの違いだけなのだが、されど声の大きさの違いでもあるのだ。